最近よく「持続化補助金でホームページ制作をしませんか?」というWeb制作会社の宣伝を見かけます。
今回書く「持続化補助金」は前回の記事で書いた「持続化給付金」とは全く別物です。Twitterでは混同してる方が多数見られるので間違えないようご注意下さい。
「持続化補助金って何?」「どうやったら補助金でホームページ作れるの?」という疑問をお持ちの方やクライアントさんに持続化補助金を有効に活用してもらってweb制作を受注する制作者の方に向けて持続化補助金とはどんな制度なのか解説して参ります。
この記事はこんな方にオススメ
- 広告チラシ制作や設備投資を考えている経営者の方(個人事業主含む)
- 補助金をクライアント様に使ってもらって受注したいWeb制作者・デザイナー
- 今後開業予定の方
小規模事業者持続化補助金とは
「小規模事業者持続化補助金」は経産省・中小企業庁の取り組む生産性革命推進事業の基幹となる3大補助金「ものづくり補助金」「IT導入補助金」「小規模事業者持続化補助金」の一つです。小規模事業者が商工会・商工会議所と一体となって行う販路開拓や生産性向上の取り組みを支援する補助金です。ミラサポPLUSのページには活用事例なども載っていますので一度ご覧下さい。
小規模事業者持続化補助金とは | 経済産業省 中小企業庁 ミラサポPLUS
小規模事業者自らが自社の経営を見つめ直し、経営計画を作成した上で行う販路開拓の取組を支援するものです。この「経営計画」と「販路開拓」が重要なキーワードになります。単に申請すればお金を出してもらえるものではないのでこの補助金の理念と目的をしっかり理解しましょう。
うちの店舗経営の家業では個人事業主時代に過去2回申請して2回採択されました。設備投資とそれをPRするチラシやDM送付などの販路開拓です。
持続化補助金の申請に必要な書類の準備は「持続化給付金」のハードルの低さとは比べものになりません笑「持続化給付金」は既にある書類をスキャンして整理すればすぐ準備できますが、「持続化補助金」の申請書類の作成にはかなり時間がかかります。1日ではまず無理ですので余裕を持って準備します。
持続化補助金は事業所のある地域の商工会・商工会議所の承認を得ること申請の条件になります。会員じゃなくても商工会や商工会議所に相談できるのでまずは相談しましょう。
コロナ特別対応型
今般の新型コロナウイルス感染症の影響を乗受け、「コロナ特別対応型」が一般型の公募とは別に発表されました。新型コロナウイルスの影響を乗り越えるため前向きな投資を行う事業者に対し、補助率や上限額の引き上げ等を行った特別枠の申請が可能になっています。
税理士YouTuberヒロさんの動画がわかりやすいです。
今回の公募(コロナ特別対応型)においては、特例として、2020年2月18日以降
http://www.shokokai.or.jp/jizokuka_t/doc/%E5%85%AC%E5%8B%9F%E8%A6%81%E9%A0%98%EF%BC%88%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E7%89%B9%E5%88%A5%E5%AF%BE%E5%BF%9C%E5%9E%8B%EF%BC%89.pdf?200508
に発生した経費を遡って補助対象経費として認めます
一般型では経費の購入は採択決定後の実施期間のみ認められますが、コロナ特別対応型では特別に2020年2月18日以降の経費も対象となるようです。
事務局(商工会地区分)
補助額上限:50万円 2/3補助率
第1回受付締切:2020年 3月31日(火)[締切日当日消印有効]
第2回受付締切:2020年 6月 5日(金)[締切日当日消印有効]
第3回受付締切:2020年10月 2日(金)[締切日当日消印有効]
第4回受付締切:2021年 2月 5日(金)[締切日当日消印有効]
補助額上限:100万円 2/3補助率
・類型 A サプライチェーンの毀損への対応 2/3
・類型 B 非対面型ビジネスモデルへの転換 補助率 2/3
→ 3/4
・類型 C テレワーク環境の整備 補助率 2/3 → 3/4
第1回受付締切: 2020年 5月15日(金)[郵送:必着]
第2回受付締切: 2020年 6月 5日(金)[郵送:必着]
補助額上限:50 万円(又は、総補助額の 1/2 まで) 定額補助(10/10)
対象者 ・対象経費:持続化補助金(特別枠・通常枠(※))、ものづくり補助金(特別枠)の採択者
対象経費:業種別ガイドライン等に沿った感染防止対策の経費(例:消毒、マスク、清掃、間仕切り、換気設備等の費用)39 県で緊急事態宣言が解除された 5 月 14 日以降に発生した経費が対象
事務局(商工会議所地区分)
補助額上限:50万円 2/3補助率
第1回受付締切:2020年 3月31日(火)[締切日当日消印有効]
第2回受付締切:2020年 6月 5日(金)[締切日当日消印有効]
第3回受付締切:2020年10月 2日(金)[締切日当日消印有効]
第4回受付締切:2021年 2月 5日(金)[締切日当日消印有効]
補助額上限:100万円 2/3補助率
・類型 A サプライチェーンの毀損への対応 2/3
・類型 B 非対面型ビジネスモデルへの転換 補助率 2/3
→ 3/4
・類型 C テレワーク環境の整備 補助率 2/3 → 3/4
第1回受付締切: 2020年 5月15日(金)[郵送:必着]
第2回受付締切: 2020年 6月 5日(金)[郵送:必着]
補助額上限:50 万円(又は、総補助額の 1/2 まで) 定額補助(10/10)
対象者 ・対象経費:持続化補助金(特別枠・通常枠(※))、ものづくり補助金(特別枠)の採択者
対象経費:業種別ガイドライン等に沿った感染防止対策の経費(例:消毒、マスク、清掃、間仕切り、換気設備等の費用)39 県で緊急事態宣言が解除された 5 月 14 日以降に発生した経費が対象
持続化補助金の対象者・対象経費
小規模事業者であることが条件になります。小規模事業者の定義は以下の通り。
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) | 常時使用する従業員の数 5人以下 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 常時使用する従業員の数 20人以下 |
製造業その他 | 常時使用する従業員の数 20人以下 |
従業員のいない個人事業主ももちろん対象になります。
小規模事業者持続化補助金 | |
対象者 | ・会社および会社に準ずる営利法人 ・個人事業主(商工業者であること) ・一定の要件を満たした特定非営利活動法人 |
対象事業 | 販路開拓や売上拡大への取組 |
経費となるもの | 販促用チラシ・広告・Webサイト・印刷代・ネット販売システムの構築・専門家の助言、コンサル・新商品開発の原材料・試作品用のパッケージ費用・生産販売拡大のための鍋・オーブン・冷凍冷蔵庫、新 たなサービス提供のための製造・試作機械・店舗改装 |
経費とならないもの | パソコン・タブレット・周辺機器(目的外使用可能な汎用的なものはNG)実際に販売する商品を生産するための原材料の購入パッケージ費用・ウェブサイトのSEO対策等で効果や作業内容が不明確なもの |
経費の支払い方法 | 原則銀行振込(クレジットカード払いも可能だが事業期間中の口座引き落としが必要) |
加点 | 「給与支給総額が年率平均1.5%以上向上」 「事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上」 「経営力向上計画」 *新型コロナウイルスの影響で売上減少した事業者には加点ありとのこと |
補助上限額 | 50万円[一般型] 100万円[コロナ特別対応型] +50万円事業再開枠(定額補助) |
補助率 | 2/3(5/22追加の事業再開枠(定額補助)と「特別枠(類型 B 又は類型 C)」の補助率の引き上げあり) |
支給時期 | 実績報告書を提出した後(コロナ特別対応型は「概算払いによる即時支給(審査後、交付決定額の50%を支払う)」あり) |
残念ながらパソコンやタブレット・プリンターなど汎用的なものは補助対象経費となりません。その他目的外に使用できるもの、販路開拓に繋がらないと判断されるものは補助対象経費となりません。
また必要な経費は全て先に自社負担で支払う必要があります。補助金は後払いであることにご注意ください。
コロナ特別対応型は補助額の50%が即時支給もありますが、売上が前年同月比で20%以上減少などの条件や市町村の承認が必要となります。
例えばこんな費用に使えます
- コロナの影響でオンライン授業事業を展開しようとする学習塾の導入費用(配信用webサイト制作・配信システム開発など)
- 非対面型のEC販売に取り組む飲食店・販売店のネットショップ出店費用・ECサイト構築費用
- デリバリーの注文を受けるWebサイト制作費用
- 旅館が、自動受付機を導入し、非対面型のサービスを提供する【経産省のパンフレットより】
- 感染症収束後の販路拡大に備えて、「インバウンド向けの英語表記メニュー」や「のぼり」を作成
- そば粉の製粉に使用する機械を一新し、そば粉の前処理の安定化、かつ時間短縮化により、事業再開後の繁忙期の売り切れなどを回避
- 再開後のインバウンド需要取り込みのため、旅館にて、外国語版Webサイトでピクトグラムの活用やムスリム対応情報を発信し、外国人団体旅行予約の拡大を図る。
申請の流れ
作成には日数がかかるので余裕をもって早めに依頼しましょう。
補助金の採択審査は、提出資料について、「表1:審査の観点」(P.39)に基づき、有識者等により構成される審査委員会において行われる。
応募事業者全員(共同申請の場合には代表事業者)に対して、採択または不採択の結果を通知
採択の通知を受け交付決定通知書が届いた後、実施期間内に経費の購入・補助事業を実施する
経費購入の証拠をしっかり残すこと。発注書・見積書・請求書・納品書・領収書が必要となります。
第1回受付締切分
事業実施期間:交付決定日(※2020年2月18日まで遡及可能)から実施期限(2021
年1月31日(日))まで
補助事業実績報告書提出期限:2021年2月10日(水)
第2回受付締切分
事業実施期間:交付決定日(※2020年2月18日まで遡及可能)から実施期限(2021
年3月31日(水))まで
補助事業実績報告書提出期限:2021年4月10日(土)
補助事業実績報告書が受理承認された場合のみ補助金が入金されます。
採択される経営計画書の書き方
持続化補助金は給付金と違って条件に該当しても申請したら全員が通るものではありません。「販路開拓に有効か」「実効性があるか」「実際に売上向上・販路開拓に繋がるか」といった観点から審査されます。
経営計画書に書くこと
コロナ特別対応型では以下のA~Cに該当する事業計画が必要です。
(1)補助対象経費の6分の1以上が、以下のいずれかの要件に合致する投資であること。
A:サプライチェーンの毀損への対応
顧客への製品供給を継続するために必要な設備投資や製品開発を行うこと
B:非対面型ビジネスモデルへの転換
非対面・遠隔でサービス提供するためのビジネスモデルへ転換するための設備・
システム投資を行うこと
C:テレワーク環境の整備
従業員がテレワークを実践できるような環境を整備すること
※補助対象期間内に、少なくとも1回以上、テレワークを実施する必要があります。
具体例
【「A:サプライチェーンの毀損への対応」の取組事例イメージ】
・外部からの部品調達が困難であるため、内製化するための設備投資
・製品の安定供給を継続するため、設備更新を行うための投資
・コロナの影響により、増産体制を強化するための設備投資
・他社が営業停止になったことに伴い、新たな製品の生産要請に応えるための投資
→コロナの影響で海外からの資材が調達できなったケースに対する対応
【「B:非対面型ビジネスモデルへの転換」の取組事例イメージ】
・店舗販売をしている事業者が、新たにEC販売に取り組むための投資
・店舗でサービスを提供している事業者が、新たにVR等を活用してサービスを提供
するための投資
・有人で窓口対応している事業者が、無人で対応するための設備投資
・有人でレジ対応をしている事業者が、無人で対応するための設備投資
※単に認知度向上のためのHP開設は、対象になりません。
→ネットショップの出店費用やECサイト構築費用・オンライン決済の導入費用
民泊施設のセルフチェックインシステム導入費用
【「C:テレワーク環境の整備」の取組事例イメージ】
・WEB会議システムの導入
・クラウドサービスの導入
→社内チャットシステム・web会議ツールの導入費用・業務効率化ツール
単にお店のホームページ作りたい!では絶対通りません。
例えばHPを作るのは手段であってそれが目的ではありません。HPを使って何をするか、何が得られるかが重要です。
コロナで売上減少となった飲食店でデリバリーやEC参入を計画されているならそのお店の強みである魅力的な商品をネットで手軽に注文できるシステムを導入し今までお店に来られなかった層への販路開拓ができる、ネット通販で全国を相手に商売できるという目的を立てます。
その目的をPRする広告制作やDM送付やその他広報活動も計画に入れます。
業務効率化ツールの導入や店舗改装などの設備投資も対象ですがその事業を行ったことをPRする告知・広報活動を入れると通りやすくなります。(わかりやすく形の残るチラシ制作は入れておいた方がいいです。)
SWOT分析で強み弱みを可視化
SWOT分析は経営分析において外部環境や内部環境を強み (Strengths)、弱み (Weaknesses)、機会 (Opportunities)、脅威 (Threats) の4つのカテゴリーで要因分析する手法です。
(例)自然食を提供するオーガニックカフェという体で分析してみました。
(強み) ・きめ細かい対応ができる ・契約している有機農法農家の野菜を安く仕入れることができる ・独自のレシピで他店にはない味を提供できる | (弱み) ・提供に時間がかかり回転率が悪い ・調理をできるのが店主のみだが、スタッフに教育伝授する時間の確保が難しい |
(機会) ・SNSでのフォロワーが多くインプレッション数が大きい ・顧客のクチコミ投稿が多い | (脅威) ・立地が悪くウォークインの見込み客が少ない ・新型コロナウイルスの影響による外食自粛 ・コンセプトを真似た競合店の出店 |
このように強み弱みを客観的に見直すことで販路開拓に必要な事業は何なのか考えていくことができます。
Webサイト制作を受注する方へ
クライアント様が持続化補助金を使ってWebサイト制作を依頼される場合、制作者側も上記の「経営計画」「販路開拓」を考慮して効果的な提案をすることで、お互いにとってWIN・WINな仕事をすることができます。
- 必ず後払いの補助金であることを伝えること
- 必要な見積書・請求書の発行に応えること
- クライアント様の経営計画をしっかりヒアリングし、販路に繋がる提案をすること
経営計画書の作成をサポートすると成約しやすいので、できればクライアント様の申請のお手伝いはしてあげた方が良いと思います。
以上、簡単な申請ではありませんが、広告制作や設備投資の予定がある場合や新たな取り組みを計画されているなら補助金は大いに役立ってくれます。しっかり要領を読み込んで準備してみて下さい。
まずはお近くの商工会・商工会議所で相談されることをオススメします。